マクロビオティックという生活法
マクロビオティックは未精白の玄米や雑穀を中心に、その土地で採れた旬の野菜、海藻、豆等を丸ごと食べる食餌療法、長寿法。日本の禅宗の食事に由来するといわれ、桜沢如一(1893〜1966)が提唱し欧米へ広めました。
macrobiotique(マクロビオティック)という言葉は三つに分割でき、macro
は「長い、大きい」、bio は「生命」、tique は「術、学」を表します。つまり「長く思いっきり生きるための理論と方法」ということです。
また、マクロビオティックを「大きな視野で生命を見ること」と解釈すれば、通常の飲食物を含む生活環境のあらゆる事柄に注目することを意味します。例えば、「人の言葉や、温度、風圧、天気、聴く音楽も見る絵も、着ている服も、マクロビオティックでは全部「食べ物」と捉えます。それらをバランス良く取り入れながら環境と人間との調和をはかり、失われた心身の調和を取り戻していきます。
アメリカで注目!
マクロビオティックに もっとも熱い視線を注いだ国がアメリカでした。歌手のマドン ナをはじめ、アメリカのセレブもマクロビオティックを実践していますし、カーター元大統領、
クリントン大統領、マイケル・ジャクソン、故ジョン・レノン、故ジョン・デンバー、トム・クル ーズ、女子テニスのマルチナ・ナブラチロワ、トライアスロンチャンピオンのデイブ・スコット、陸上競技のカール・ルイス、リッツカールトンホテルのシュルツィ社長などの実業家を含めると、約200万人が実践しているのです。
高級ホテルチェーンである「ザ・リッツ・カールトン」では、1995年から30か国にあるすべてのホテルでマクロビオティックのメニューを導入しました。日本の玄米菜食というと見た目も味も地味なイメージも時代とともに変化し、マクロビオティックを学んだ料理人たちがフ
レンチなどのテクニックを取り入れて、洗練された盛り付けなどで見た目もきれいになりました。
身土不二
マクロビオティックの基本的な考え方に身土不二というものがあります。これは、身体(身)と環境(土)はバラバラではない(不二)という意味です。
人間も自然の一部であり、身体が環境に適応できるように食生活を送る必要があります。そのためには、土地柄と季節に合った食べ物を食べることが大切。国産品で旬のものを中心に食べていれば、その土地の気候や季節の変化に適応することができるのです。
たとえば日本の暑い地方では体を冷やし緩める食べ物、バナナやサトウキビなどが採れ、反対に寒い地方では体を温め引き締める食べ物、そばや小豆、ひえなどが採れます。それぞれの地で暮らす人には必要な食べ物です。加えて、四季のはっきりした日本では、巡ってくる季節によっても体が要求するものが変わっていきますから、四季折々の旬のものを食べることは大事なことなのです。
土地のものをその土地で食する・・・。これは「郷土料理を守ろう」「質の良い素材を提供する小生産者を守ろう」「子どもたちに味の教育を進めよう」をスローガンに、1989年にイタリアで始まったスローフードの考え方にも共通しています。
現代の日本では、熱帯産の果物や季節はずれの野菜なども日常的に売られています。しかし、土地柄や季節に反した食べ物を常食としていては丈夫な体は作れません。それらを食べるにしても、量を控えたり調理法を工夫するなどして、総合的なバランスが保てるよう心掛けます。
旬の野菜
| 春 |
にんじん、菜の花、クレソン、大根、万能ねぎ、春ごぼう、三つ葉、新玉ねぎ、キャベツ、貝割れ大根、さやえんどう、さやいんげん、セロリ、かぶ、れんこん、カリフラワー、ブロッコリー、スナップえんどう、長ねぎ、たけのこ、白菜、小松菜、そら豆、ルッコラ、グリーンピース。 |
| 夏 |
とうもろこし、ラディッシュ、レタス、きゅうり、かぼちゃ、枝豆、とうがん、じゅんさい、ルッコラ、おかひじき、もやし、みょうが、しょうが、青じそ。 |
| 秋 |
栗、生しいたけ、まいたけ、しめじ、えのきだけ、エリンギ、山いも、ごぼう、れんこん、かぼちゃ、菊の花。 |
| 冬 |
白菜、長ねぎ、春菊、大根、ブロッコリー、カリフラワー、ぎんなん、水菜、ゆり根、ゆず。 |
一物全体
一物全体とは、一つのものを丸ごと食べるという意味。食べ物を含むあらゆるものは、周りから様々な影響を受けて存在し、それ全体として調和しています。穀物はなるべく精白していない玄米で、野菜は皮も根も捨てずにすべてをいただきます。野菜は皮をむかず、ゆでこぼしや水のさらすこともしません。あくも旨みのうちと考えるからです。
穀物の皮や胚、野菜の皮やその近くには、そこにしかない栄養も含まれています。また皮や芯などの固い部分には、食物繊維が豊富に含まれています。皮つきの方が味にコクや深みが出てくるので、味わいと栄養の両方をいただけるのです。
泥のついた野菜でも、よく洗えば皮つきで大丈夫。キャベツなどの芯は、薄切りにしたり、やわらかい部分より長く熱を加えます。玉ねぎ、長ねぎの根はよく洗い、細かく刻んで炒めたり、煮込んだり、揚げたりして利用します。
またマクロビオティックでは、なるべくゆでこぼしたり、アクを抜いたりはしません。その方が、素材本来の味を楽しめ、また栄養分を活用することができます。ごぼうやれんこんなど割とアクの強い根菜は、水にさらさずに、油で炒めればアクを飛ばせます。水戻しが必要な海藻類や乾物も、短時間で水から出したり、戻した水を再利用できるよう洗ってから水に浸けたりと、成分をなるべく損なわなくてすむようにします。
また、マクロビオティックでは体に負担をかけるという理由から、砂糖、肉、卵、乳製品、魚も避けるのが基本です。タンパク質やカルシウム不足が気になるところですが、玄米や雑穀、豆類には良質の植物性タンパク質やカルシウムをはじめ、ビタミンB群、鉄分、リンなどのミネラルも含まれています。これら未精白の穀物と、無農薬無化学肥料栽培の野菜、海藻、豆製品をバランス良く調理することで、からだにも環境にもやさしい食事ができるとされています。
玄米菜食
歯の構成から見る人類の食事
人の歯は全部で32本あり、そのうち奥歯の20本が臼歯、前歯の8本が切歯、残りの4本が犬歯です。主に臼歯は穀類をすり潰す歯、切歯は野菜や海藻を切る歯、犬歯は肉や魚を食いちぎる歯だったと考えられます。つまり、食事の5/8が穀類、2/8が野菜や海藻、1/8が肉や魚という割合で人は食物を食べてきたと推測できます。人間は、穀類を主食にするのが自然なようです。
日本の伝統食
身土不二と一物全体の考え方に則るなら、日本の伝統食が日本人にとって最も相応しい食事となります。まず主食は玄米を中心にひえやあわなどの雑穀で、食事の半分強を占めます。副食は野菜の煮炊きなどを。汁物には野菜、海藻、豆製品などを取り入れます。調味料は、自然な製法による味噌、醤油、塩が基本。さらに、丸ごと食べられる小魚や近海の魚介類を食べる場合もあります。
昔と比べると、現代の一般的な食事はおかずに偏りがち。主食以外で何でもかんでも食べることが、以前には見られなかったような現代特有の病気に繋がっているのかもしれません。私たち日本人としては、玄米を主食とする食事を見直す必要がありそうです。
陰陽について
陰陽とは何か
東洋には、陰陽という相反する二つの気、エネルギーが万物を創り出している、とする世界観が古くからありました。マクロビオティックでは、この考え方を原理としながらも、陰陽については独自に整理しています。
陰とは拡散していく遠心的なエネルギー、そして陽とは収縮していく球心的なエネルギー。さらに、陰の性質は遠心力、拡散性、上昇性、静かさ、冷たさなど。それに対し陽の性質は球心力、収縮性、下降性、動き、熱さなどです。
陰陽の間には他の要素が入る場合があり、これを中庸といいます。例えば、熱帯の食べ物が陰、寒帯の食べ物が陽だとすると、温帯の食べ物は中庸となります。
また、左・右や寒さ・暑さなどは、基準があって初めて決まるもの。つまり、陰陽というのは相対的なものだといえます。そして、完全に陰性だけ、陽性だけということはなく、程度の差はあっても常に両方の性質を含んでいます。
中庸を得る
人間の心身であれ、政治・経済の諸現象であれ、その陰陽の性質がどちらか一方に偏り続けるのは健全な状態とはいえません。例えば、株価が上昇するのは好ましいこととされますが、実体経済を大きく離れて上昇し続けるのは、普通はバブルという異常事態と見なされます。この状態が永久に続くことはなく、やがて適正な地点へと引き戻されますが、その過程で受ける被害は甚大なものとなるでしょう。
したがって、陰陽という二つの性質がバランスよく保たれるよう、日頃から調節しておく必要があります。ただし、これは決して一つの状態に固定されることではありません。調和しているとは、バランスを保ちながらも適度な範囲で揺らいでいる状態をいいます。その方が、万が一の事態にも柔軟に対応することができるのです
 |
外にむかって拡散・上昇するエネルギー
膨らむ・冷たい・静か・甘い・すっぱい・辛い
身体を冷やす植物
暖かい所、暖かい時に出来る植物
水っぽく冷たい植物
背が高い植物 |
中心に向かって収縮するエネルギー
ちじまる・激しい動き・熱い・苦い・塩辛い
身体を温める植物・動物
寒い所、寒い時に出来る植物
身がしまって硬い植物・動物
背が低い植物・動物 |
マクロビオティックの標準食
体質の陰陽のバランスが崩れて心身の調子が悪い時は、食事の陰陽のバランスも崩れているはず。極端な陰陽の食べ物を除いた一定の範囲のものを食べることで、心身の調和もとれてきます。マクロビオティックの標準食は、食事のバランスをとる際の目安になります。
毎日の基本になる食材
完全穀物とその加工品(総重量の40〜60%前後)
常食するもの
玄米、全粒麦(はと麦)、きび、あわ、ひえ等。
準じて使う
もち玄米、押し麦、そばの実、とうもろこし、高きび、全粒クスクス、玄米餅ほか全粒穀物の餅、全粒うどん・そうめん・そば・パスタ・麩等。
さらに準じて使う
完全穀物の粉類(完全小麦粉、ポレンタ等)、セイタン・コーフー、生麩、全粒トルティーヤ・ベーグル・パン等。
補助として時々少量使う
精白小麦粉、上新粉、白玉粉など精白した穀物の粉。
スープ(1〜2回)
だしは、昆布や干し椎茸、切り干し大根など植物性の乾物、野菜の旨味を利用。味噌汁の他、おすましやその他の野菜や豆のスープ、ポタージュ(乳製品は使わない)等。
野菜(総重量の20〜30%)
野菜は温帯原産の種のものが基本。丸い形の甘味のある野菜(かぼちゃ、キャベツ、かぶ、カリフラワー等)を主体に、根菜類(大根、人参、ごぼう、れんこん等)、葉菜類(ねぎ、大根葉、人参葉、小松菜等)をバランスよく使う。
日常使う
小松菜、春菊、パセリ、水菜、からし菜、セリ、人参葉、大根葉、かぶ葉、たんぽぽの葉、ねぎ、あさつき、白菜、チンゲン菜、かぼちゃ、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツ、玉ねぎ、かぶ、ごぼう、人参、大根、れんこん、ラディッシュ、自然薯。
準じて使う
セロリ、きゅうり、きのこ類(マッシュルーム、えのき等)、いんげん、さやいんげん、もやし、アルファルファ、赤キャベツ、レタス。
治病中は要注意(やや陰)
さつまいも、里いも、筍、にら、野草、レモン、にんにく(香りつけ)。
できるだけ避ける(極陰)
トマト、じゃがいも、アスパラガス、なす、ほうれん草、アボカド、ピーマン、にんにく(食べる)。
豆とその加工品(総重量の5〜10%)
日常使う
小豆、黒大豆、レンズ豆、ヒヨコ豆、味噌、納豆、テンペ、豆腐、高野豆腐等。
準じて使う
インゲン豆など大きい豆や、豆乳、油揚げ、厚揚げ、湯葉等脂肪の多い加工品。
海藻(総重量の2〜10%)
わかめ、のり、あらめ、ひじき、昆布。
その他
調味料
添加物や動物性だしが入ってない、自然な製法のもの。
卓上調味料
ごま塩(白、黒)、ゆかり、青のり、鉄火味噌、漬物(梅干、たくあん等で砂糖や添加物無しのもの)。
湯茶
番茶(茎茶、椿茶)、玄米茶、麦茶等が中心。コーヒー、紅茶、緑茶は陰性が強く常飲しない。穀物コーヒー、たんぽぽコーヒー等はやや陽性が強い。
|